何枚も何枚も書いて、家中が紙くずだらけになって、疲れで腕が痺れながら、

ようやく、今まで以上に上手に書けた作品が、いろんな人から「いいね」と評価されると、

大きな喜びがあふれ出ることがあります。




しかし、どうも、この「上手さ」には副作用があるようで、

【上手く書けた→評価される→もっと上手く…】と、

「上手さ中毒」になってしまう例は後を絶ちません。




書けば書くほど上手くなるはずと100枚書いたら、一枚目の方が良かった…ということは、

書道では、よくある話です。より上手くと中毒的に99枚頑張っても、

なにげなく書いた最初の1枚目に敵わないことがあるのです。




その原因は様々でしょうが、「上手く書こう」とした瞬間、

「ノイズ」(無自覚的違和感)が生じていることも考えられます。

気づかないうちに肩を強張らせてしまうなど、

ノイズにより書への集中が不透明になっているのです。




もちろん、上手さを求める稽古は大切です。

書法道場では、短期間で上達するメソッドを実践しています。

ただ、ノイズが大きすぎる状態では、上手くなる前提が失われ、

どんなに稽古をしても、単なる苦行(自己満足)に終わってしまいかねません。




そこで、道場では、ヒモトレや瞑想などでノイズを弱め、「透明」に近づく機会を大切にします。

ここでの「透明」とは、書への集中を阻害するノイズが取り除かれた状態。

言い換えると、「心地よさ」という生命のあり方を感じている状態をいいます。




透明な状態であるがゆえに、個々の生命のあり方が「書」として表出され、

その「書」によってこそ、この時代を、豊かに生きるエネルギーが引き出されていくのです。




「書を通じて人生を豊かにする」を掲げ、書法道場を開講して10年(京都道場は今月で開講7年)。

生徒の皆さんのイキイキとした表情に包まれているおかげで、この目的を掲げ続ける大いなる勇気をいただいています。




                                                              書法道場師範 武田双鳳