書の美しさの起点は「腰の入った線」です。

そこから生まれる深度・速度・角度の筆蝕三重奏が、豊かな書表現を生み出していきます。



だからこそ、書法道場の稽古では、飛んだり跳ねたり、時には、ひっくり返ったりしながら、

「腰の入った」心地よさを味わう時間を設けています。



とはいえ、筋トレのように身体に負荷をかけることはしません。

書は負荷を外し、身体を軽やかにしていく所作です。

重さを重さとして受け取る筋トレと、重さを軽やかな動きに変える書とでは、その方向性は相容れないでしょう。



「腰の入った線」という身体性(肉筆性)を、最初に書で表したのは書聖・王義之(307〜365年頃)です。

代表作「蘭亭序」では、篆・隷書体ではできなかった人間の生き様の表現を、

二折法(自然筆法)という身体性によって可能にしたのです。



リズミカルな運筆で書に「韻」(ひびき)を与え、三折法という「法」(ことわり)の完成へと誘った王義之の書きぶり。

それを私たち現代人にフィードバックすれば、

きっと、古代人の身体性(流麗な動き)が、今の身体に引き出されていくのでしょう。



書は、言葉に生命を与える営みです。生命は身体に宿ります。

書を実現するには、自分の身体という最も身近な大自然の聲を聴く機会が、どうしても必要なのです。



王義之は、いったい、どのような身体の聲を聴いていたのでしょうか。



≪「言葉」−「書」−「身体」≫を通じて生に「命」を与えていく営みを、

みんなで存分に楽しんでいきましょう。



書法道場師範 武田双鳳