2018年11月の稽古テーマ





「『ち』で書く」―。


書の師匠である母・武田双葉から、そう教わったことがあります。



そう聞いて、

「やはり、書は血。血統なのか。生まれ持っての才能次第なのか…」と思い、

自分の不器用さ、才能のなさを恨めしくも思いました。



ただ、「ち」=「血統」と決めつけるには不自然な出来事が、

この道場で次々と起こっています。



例えば、足の置き方を変えるだけで、墨色深まる生徒さんを見ると、

「『ち』は、足の接地の『地』なのか」と思います。



マッサージで手を解すだけで、線が軽やかになる生徒さんを見ると、

「『ち』は、身体の血めぐりの『血』なのか」と思います。


呼吸の仕方を整えるだけで、払いが抜ける生徒さんを見ると、

「『ち』は、『息』(「ち」とも読む)」と思います。



調べてみれば、和語の『ち』には、

「血」「地」「息」以外の意味も複数あるようです(「氣」や「霊」など)。



今まで、理解したつもりだった師匠の教えは、

本当に「つもり」だったよう。



その『ち』には、もっと奥深く、

もっと豊かなヒントが詰まっているのでしょう。



真摯に書に向き合う生徒の皆さんのおかげで、

日々、新しい「ち」(智恵の智)も生まれています。



はたして、「『ち』で書く」とは、どういうことでしょう。

今月も、ばっ「ち」りと、筆の心地よさを味わい、

それぞれの『ち』を深めていきましょう。 


                                                              書法道場師範 武田双鳳