稽古風景
【2025年3月の稽古風景】
◎“アタマの清書”は、半年分の総まとめ!
☆100点満点おめでとうございます!
【2025年2月の稽古風景】
バランスボードやヒモトレを活用した『よつんばいの稽古』で、あたたく軽やかな背中の動きを引き出していきました。
(1)簡牘(木簡)…近年出土が相次いでいる簡牘(肉筆の古代文字)によって、「秦代に隷書あり」「前漢に波磔あり」など、旧来の説が覆されています。今回は多種多様な簡牘の中でも「隷書」に着目し、睡虎地秦墓の古隷、敦煌漢簡の八分や草隷、章草を鑑賞しました。隷書の中でも古隷が、草隷・章草と簡略化・実用化されていき、章草が「今草」に変わり、現在使用される草書の原型が出来上がりました。
(2)趙之謙…月例誌掲載の趙之謙の書技法を効率よく習得するために、清代の書を四期に分けて捉えていきました。王鐸・傅山らの明末連綿草によって王羲之の流れをくむ伝統的な書表現がピークに達した後、@清代初期には八大山人や揚州八怪(金農や鄭燮など)によって、王羲之書法からかけ離れた無限折法による「味のある書」が出現します。A清朝中期には、伝統的な帖学派の劉?がトップに躍り出ますが、同時期、ケ石如が古代文字の筆文字化に成功し、王羲之が書かなかった篆書・隷書等をベースとする碑学派が立ち上がります。B清朝後期には、ケ石如の技法が包世臣によって逆入平出法という形でマニュアル化され、呉譲之、趙之謙らが実践、碑学派が主流となっていきます(なお、何紹基は碑帖兼習の立場)。C清朝末期には、大篆(石鼓文)に基づく筆法で清朝最後の文人と評される呉昌碩が活躍します。
(3)小野道風…平安の三筆の書(空海・橘逸勢・嵯峨天皇)を終え、今回は平安の三蹟・小野道風「屏風土代」を取り上げました。野跡(道風の書)は、王羲之や空海と比べて「側筆によってたわむ線」が多く、「方形な字形」が目立ちます。藤原行成の書と字形は似ていますが、道風は全体的に線質が重厚で、行成は繊細です。道風によって「日本文字=和様」が完成されたと言われますが、唐様との違いを整理しておきたいものです。
(4)西行…これまで「貴族の仮名」とは異なり、西行の書とは、いわば「武士の仮名」。王朝文化がピークに達した藤原摂関期の「高野切」と、武士が台頭する院政期の「関戸本古今集」や「元永本古今集」、武家政権に移行する院政後期〜鎌倉時代の「西行系の仮名」(「一条摂政集」や「中務集」など)の書風は、どのように異なるのでしょう。主要三古筆(高野切・関戸本古今・元永本古今)をベースにしつつ、藤原伊房「藍紙本万葉集」によるターニングポイントから、いかに仮名書法がシフトチェンジしていたったのか。「平安かなの美」(二玄社)などで、鑑賞を試みたいところです。
【2025年1月の稽古風景】
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【基礎書法講座〜2025年1月】
(1)隷書…五つの隷書碑、「魯孝王刻石」(前56)・「ライ子侯刻石」(56)・「開通褒斜道刻石」(66)・「石門頌」(148)・「乙瑛碑」(153)をピックアップ。摩崖碑か石碑か、古隷か八分隷かなどを区別したうえで、"味のある書"の"味"(古樸)の出どころを研究していきました。
(2)行書…北宋の三大家・米?(1051〜1107)の「蜀素帖」を中心に、"上手い書"の"上手さ"(超絶技巧)の出どころを、例えば、蘇軾と比較して字軸が左に傾くなど、他の能書家(王義之や李?、顔真卿、黄庭堅、趙孟?、文徴明など)の行書と比較しながら捉えていきました。
(3)和様…平安の三筆・橘逸勢(?〜842)の「伊都内親王願文」を通じて、"和様の書"の"和"と出どころを研究していきました。特に、空海や嵯峨天皇の書に比して、傾筆・側筆を多用する箇所に着目しまいた。
(4)仮名…男手(万葉仮名)から女手(平仮名)に変わる過渡期にある「草仮名」の代表作「秋萩帖」(伝・小野道風)を素材に、例えば、正方形の字形が多いなど、漢字の書に対する「かなの書」の特徴を捉えていきました。また、藤原行成を祖とする世尊寺家のうちでも、特に、伊房・定実・定信の書をチェックしていきました(「藍紙本万葉集」(第三代・伊房)、「貫之集下」(第四代・定信)、「元永本古今集」(第五代・定実)。
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◎児童生徒の皆さんも書法道場展「あっぱれ」に向けて、書作品づくりにチャレンジ!
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【2024年12月の稽古風景】
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◎書法道場展(2025年3月19日〜3月23日)に向けて、作品制作!
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【基礎書法講座〜2024年12月】
今回は@大篆と小篆、A古法草書と新法草書、B三筆と三蹟、C五大万葉集、D基本筆法(補足十二法)を学習しました。
@については石鼓文(大篆)と泰山刻石(小篆)を鑑賞し、両者の違いを「神から人へ」(書の政治化)という視点で、「字画化」「字界化」「長体化」といったキーワードで捉えていきました。
Aについては、王羲之「十七帖」と孫過庭「書譜」で隷書の崩しとしての古法草書を、懐素「自叙帖」と黄庭堅「李太白憶旧遊詩巻大で楷書の崩しとしての新法草書を鑑賞し、「実用性から芸術性へ」という視点で、「三折法」「連綿体」などのキーワードで、古法と新法の異同を比較していきました。
Bについては、特に嵯峨天皇「光定戒牒」に着目しつつ、「側筆」「雑体書」などのキーワードで、「唐様から和様への変遷」(日本文字の成立過程)を捉えていきました。
Cについては、特に、仮名の革命に起こしたとも言われる世尊寺家第三代・藤原伊房「藍紙本万葉集」と第五代・定実「金沢本万葉集」に注目しつつ、桂宮本と高野切第二種、元暦校本と高野切第三種といったように、他の古筆との関連付けを行いました。
Dについては、「永字八法」「八病八疾」から続く基本筆法、「補足十二法」(前半)の常識化(当然に使いこなせるようになる)を目指し、知識の精度をあげていきました。
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【2024年11月の稽古風景】
◎書法道場展「遖〜あっぱれ」に向けて!
来年3月烏丸御池「しまだいギャラリー」での書作品発表に向けて、児童生徒のみなさんも、たのしそうに筆を走らせています。
月例誌掲載の手本通りに書いてもOK、好きな古典の風合で書いてもOK!
特に、通学生の方は、古典に基づいて清書を制作する「随意部」にチャレンジしました。
「筆以外の道具」を使って、「さかなへんがつく漢字」を、「書き順通り」に書いてデザインする―という制約があるからこそ、自分にとっても想定外のアート表現が飛び出してくるものです。
【基礎書法講座〜2024年11月】
中国の書では、まずは篆書の中でも「金文」(青銅器などに彫られた古代文字)を。当初は塗りこめ部があるなど絵画的だったデザインが、次第に点と線で構成される字画的なものに変わっていきます(殷末西周初期「大盂鼎」→殷末西周後期の「秦公皀殳」→戦国時代「中山王サク方壺」を比較してみましょう)。
次に楷書。今回は「隷書」から「北魏楷書」への変遷を辿っていきました。「爨宝子碑」で三角形の起筆が生まれ、「龍門造像記」(牛?造像記など)で横画に角度がつき、「貞碑」で右方発展体の均衡構造を備え、唐代楷書に近づいていきます。
日本の書では、最澄が「非三筆」である理由を、「三筆」の空海の書と比較しながら探っていきました。どこが、唐様の書からはみ出し、和様の書の起点となっていったのか。まずは、「久隔帖」と「風信帖」を比べてみましょう。
仮名については、いわゆる「世尊寺流」、藤原行成の子孫たちの書の特徴を、第三代・伊房の「藍紙本万葉集」と第四代・定実の「元永本古今集」を中心に捉えていきました。第三第・行経の書とも言われる「高野切第一種」と「藍紙本万葉集」についても、比べておきたいものです。
そして、基本筆法「補足十二法」の中でも、@宝冠・A獅口・B浮鵞・C飛雁・D鳳翅・E塔勾を学びました。単に知っているかどうかだけではなく、「常識」のレベルにまで、知識と筆法の精度を高めていきたいものです。
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【2024年10月の稽古風景】
白鳥の羽で書いたり、三刀流で書いたり、でっかい筆で書いたり―。いよいよ、来年三月開催の書法道場展に向けて始動しました!
☆第9回「書法道場展」 in 烏丸御池しまだいギャラリー 2025年3月19日〜3月23日
書法道場では、日ごろから「全身の"氣"を言葉に込める稽古」をしています。今回の作品も、「上手く書こう」ではなく、『心地よく書く』を追求する中で生まれた『本来の書』です。本来の書は、見る人の心に直に元氣を与えます。ぜひ、生徒の皆さんの書作品を存分に味わい、全身を癒されてみてください。
☆「書かない書の稽古」も充実! 全身がほぐれて“通り”が良くなる心地よさを感じる機会を、分かち合っています。
☆みなさん、ステキな表情で稽古に取り組んでくれていますー
【大人の書の学び「基礎書法講座」〜2024年10月】
中国書道史の"始まり"・"終わり"・"真ん中"を学びました("始まり"=最初の古典=甲骨文、"終わり"=最新の古典=呉昌碩「臨石鼓文」、"真ん中"=顔真卿「多宝塔碑」)。書道史全体を俯瞰することでこそ、個々の古典の特徴も浮かび上がってくるものです。
その一方で、「古典」と呼ぶには新しすぎますが、近現代(中華民国〜中華人民共和国)の書にも触れていきました。碑学派の楊守敬と帖学派の端方、学者の羅振玉と章炳麟、顔法の譚延?と草書の于右任をセットにしながら書きぶりを比較していけば、頭に残りやすいでしょう。
日本書道史については、いかにして「日本文字」(和様とかな)が醸成されていったか。中国の書の歴史との比較をしつつ王仁や聖徳太子、聖武天皇、光明皇后、三筆、三跡(蹟)などのキーワードを整理し、日本文字完成までの流れを把握していきました。
そして、古典実技では、先月の"かなの基準点"に続いて、今回は"かなの到達点"の臨書です。"基準点"たる「高野切」と比較したところの"到達点"たる「香紙切」、直筆や側筆、逆筆など様々な技法が散りばめられています。
☆なぜ、顔真卿が王羲之と並ぶ「第二の書聖」と評されるのか? 王羲之書法と比較しながら、自分の言葉で説明できるようにしておきましょう(王羲之の書体の審美性を重視から、筆者の人間性を重視する方向に転換)。
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【2024年9月の稽古風景】
大津堅田と京都下京の道場では、学年を超えた交流をしながら、子供たちが書道を存分に楽しんでいます。
☆大人の生徒さんは、半切2分の1サイズの課題作品の制作を。前提として「しゃがみ稽古」などで、全身をスッキリ整えました。
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【大人の書の学び「基礎書法講座」〜2024年9月】
今回は4〜8月の「総復習」です。(1)折法の歴史、(2)清代碑学派の書、(3)中国書史の分水嶺、(4)かなの基本について復習をしていきました。
(1)では、「折法」(リズム法)という"視点"で書道史全体を捉えていきました(二折法→三折法→多折法→無限微分折法)。王羲之を祖とする折法の歴史は、欧陽詢や顔真卿らの三折法、米フツ・王鐸らの多折法へと多様化していきますが、清代の八大山人や金農らの「無限微分折法」によって王羲之書法からかけ離れていきます。
(2)では、阮元「北碑南帖論」「北碑南帖論」―書においては漢隷をベースとすべきだが、南帖には隷意がなく、北碑には隷意がある。ゆえに、北碑こそが正統である―がキッカケとなり「碑学派」が主流となっていくことを把握した上で、清代の書を初期(揚州八怪など)・中期(劉?・ケ石如など)・後期(何紹基・趙之謙など)の三期に分けて人物を整理しておきまそう。
(3)では、書道史のターニングポイントである650年頃の書(特に九成宮醴泉銘と雁塔聖教序)を学んでいきました。欧陽詢と?遂良の楷書四碑(皇甫誕碑や孟法師碑など)については、この機会に、その特徴を捉えておきたいものです。なお、唐の玄宗皇帝が石碑を日常使いの紙のように扱い、行書で刻ませた「晋祠銘」「温泉銘」は、石の歴史の終焉のシンボルとされています。
(4)では、基本三古筆(高野切・関戸本・元永本)を踏まえつつ、繊細な「曼殊院本」や大胆な「本阿弥切」などの書きぶりの特徴をおさえていきました。
☆全国最優秀賞
夏の創作書道全国大会(お題は「東京」)で清水裕子さんが全国最優秀賞を獲得されました!墨と紙と印以外は、何と、全て100均のグッズ。東京タワーとスカイツリーのシンボリックな表現、クリップによって都会的な雰囲気を、墨の濃淡で夜の街の喧騒感なども表現。本当に素晴らしい作品です!
【2024年8月の稽古風景】
◎巻くだけで書き味が変わる― バランストレーナーの小関勲氏考案の「ひもトレ」で、「練習しなくても上手くなれる」という体験を分かち合っています。
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【大人の書の学び〜2024年8月】
中国の書では清代の書を。清朝末期から中華民国、中華人民共和国の書に入り、徐三庚の捩り書法や宮島大八(詠士)・上條信山に受け継がれた張裕サの内円方外の書、虚谷の往復書法、呉昌碩や斉白石の刻刀書法など、現代的アレンジに直結する書技法をおさえておきました。
愈えつや何維樸(かいぼく)、鄭孝胥(ていこうしょ)、沈曾植(しんそうしょく)など、まだ触れておきたい能書家はいますが、特に初学者の方は、清代の書を三期に分け、八大山人の前期・ケ石如の中期・趙之謙の後期と、簡単にでも構いませんので、それぞれの書の時代性を説明できるようにしておきたいものです。
隷書の基本も学びました。まずは八分隷(波磔のある石刻隷書)、その中でも「五大隷書」の特徴を捉えていきましょう(乙瑛碑・礼器碑・史晨碑・曹全碑・張遷碑)。ゴールのひとつは"隷書の書き分け"ですが、例えば、扁平流麗な曹全碑風と方形武骨な張遷碑風といった書き分けにチャレンジしてみましょう。
日本の書では、「針切」をピックアップ。あれだけ細やかな線でありながら線が凹つくことはなく、悪筆の類がありません。どうすれば、あれだけ穂先を聴かせながら、リズミカルに運筆をすることができるのでしょう。稽古では、親指や薬指の使い方や、脇下まわりの活かし方など、身体的なアプローチを重点的に行いました。
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【2024年7月の稽古風景】
書の稽古の基本は「臨書」です。古の人の書き方を自分に憑依させようとする取り組みですが、本物の臨書とは、書き方の前提にある座り方や立ち方といった身体性までをも憑依させようとするものです。
ただ、便利さ引き換えに「カラダがない」生活をしている現代人が、なんにもなしで、(身体性を含む)本物の臨書を実現するのは困難を極めます。例えば、古来より、右手書きの人にとっては横画が右にあがる身体性が「自然」だったのですが、現代人は「右にあがれない」という不自然が当たり前となっています。
いきなり「書く稽古」をしても、そこに書法のベースとなる身体性がないままだと、書技法は身につくはずはありません。そこで、書法道場では、「書かない書の稽古」のひとつとして、身体性を磨く機会を随時設けるようにしています。
もっとも、足し算的なトレーニングには頼りません。古の身体性(例えば、横画が自然に右上がりになるといった)は、いまここ、僕らの身体の中に潜んでいます。大切なのは、既に具わっている自然の身体性を阻害する何かを「引き算」していくことです。
今月も、ひもとれやバランスボードなどを使った“あそび”を通じて、それぞれの身体性と出会う時間を楽しんでいきました。
【大人の書の学び〜2024年7月】
とかく、アドホック度が高くなりがちな書の稽古(「アドホック」とは「その場限り」という意)。手本を見て書く楽しさに甘えすぎて、自ら芸の肥やしを掴もうとすることを怠ってしまう…。書を芸として昇華させていくためには、再現可能な技法を積み重ねていくことが必要ですが、永字八法や八病八疾といった基本書技法を自分の言葉で説明できる人は、書生の中にどれくらい存在するのでしょう(「自分の言葉で説明できる」ということは、「再現可能である」ということに近しい)。
書を法的(論理的)に捉え、再現可能な芸とするために大切なことのひとつは、「比較の視点」をもつことです。前回の基礎書法講座では、唐代楷書では@チョ遂良「孟法師碑」と「雁塔聖教序」を、清代帖学派の書ではA劉?と王文治、碑学派の書ではB伊秉綬と楊ケン、古筆ではC「曼殊院本古今集」と「本阿弥切」について、比較の視点で捉えていきました。まずは、@「古」と「媚」、A「濃」と「淡」、B「静」と「動」、C「繊細」と「大胆」といったキーワードで、その書きぶりを比べつつ、それぞれの特徴を記憶していきましょう。
★「書道史の分水嶺(ターニングポイント)」は、どのタイミングなのか。また、なぜ、その時期が分水嶺といえるのか。「書体」「楷書」「石」「紙」といったキーワードを使って、説明できるようにしておきましょう。
【2024年6月】
●東京銀座で開催される「ふたば書道会展」に向けて作品制作!
●本来の書く稽古を実現するための「書かない書の稽古」(バランストレーニングなど)にも、みなさん積極的に取り組んでいます。
【大人の書の学び〜2024年6月】
最近は中国最後の王朝・清代(1644〜1912年)の書を取り上げています。近世から近代へと時代が移り変わるタイミングですから、さぞ、新しき書が登場するんだろう・・・と思いきや、清代のメインの書は、古代文字のデザインたる「碑学派の書」。なんとしたことでしょう。新しい時代の書ほど古くなっていくのです。
確かに、清代になると、物事を解釈するスタンスについては近代化し、主観的思想(儒教)に基づくものから客観的証拠に基づくものに変わっていきます。しかし、東晋(317〜419年)の書聖・王羲之をベースに発展してきた書のスタイルは、いわば先祖返りし、古代化していきます。王羲之より前の書体(篆書や隷書)がクローズアップされていくのです(「王羲之に基づかない書の登場」という点では「新しい」ともいえますが)。
書の先祖返り(古代文字化)の決定打となったのは、"碑学派の祖"といわれるケ石如の登場です(「古代文字研究に没『ケ』し、書を『石』の『如』くに変えた人物」とでも覚えればいいでしょう)。出土した金文(青銅器にほられた文字)や石刻文字を研究し、ついに、「逆入平出」という新書法によって、「古代文字」の書を編み出したのです。スティーブ・ジョブズがiPhone(苹果手机)で情報革命を起こしたように、ケ石如がgyakuhei(逆入平出)によって書道革命を起こしたのです。
その後、androidといったiPhone以外の様々なスマホの機種が登場するように、呉譲之や何紹基、趙之謙、呉昌碩といった、様々な碑学派の書が登場していきますが、詳細については、また別の機会に―。

★ステップアップコース
児童生徒さんでも「大人の書」を学ぶことができるステップアップコース、おかげさまで、好評です。
〇京都銀行堅田駅前支店でロビー展(〜2024年6月下旬頃まで)
書道家としても活躍されている書法道場の講師やアシスタント有志の作品を展示しています。
〇2024年5月の稽古風景
〇書が上達するかどうかの決定的なポイント
〇書技法のカベ
〇左利きでも書き方は
〇やろうとしなくてもできることに気付く場所
【大人の書の学び〜2024年5月】
今年の大河ドラマ「光る君へ」が、ちょうど藤原摂関時代の仮名の興隆期いうことで、遣唐使船廃止後の国風文化の起点となった「古今和歌集」や、その編纂者の紀貫之の「土佐日記」、大河の主人公まひろ(紫式部)の「源氏物語」などに触れていきました。
藤原時代→院政時代→平氏時代と安定期から騒乱期に移ろうと共に、かなの書風も変わっていきます。例えば、藤原時代の高野切第三種は直筆による規範的な書きぶりでしたが、院政時代の関戸本古今集となると側筆をまじえた個性的な書きぶりになっていきます。保元の乱に近い元永本古今集になると、逆筆を多用する前衛的な書きぶりとなり、き、きらびやかな料紙との調和美を演出する様々な技法が凝らされています(字形の引き締めや散らし書きなど)。
初心者の方は、まずは「主要三古筆」(高野切第三種。関戸本古今和歌集、元永本古今集)を「日本名筆選」(二玄社)で鑑賞し、時代背景によって変わる書きぶりの変化を味わう時間をとってみましょう。ボールペンなどで書く日常的な文章の多くは「ひらがな」です。「ひらがな」の書き方に悪癖がついたままだと、なかなかに、キレイに書けないものです。だからといって、市販の「書き方練習帳」の類を買って練習しても、所詮付け焼。こびり付いた悪癖(書き癖)はとれません。なぜか。それは見たことがないから。本来の平仮名の「目習い」の経験がないからです。手は目を超えることはありません。ぜひ、積極的に鑑賞の時間をとってみましょう。
一般公開の書道講座をオンライン(ZOOM)で開催しました!
受講生の皆さんの反応も良く、おかげさまで、とても有意義な時間を過ごせました。
【大人の書の学び〜2024年4月】
年度初めは基礎の基礎から―ということで、「永字八法」と「書聖・王羲之」をピックアップ。「永」の字の一画目(側)の書き方をみれば、「書の理解度」が分かるものです。筆法のコツが分かるよう、先人が自然界の動きに例えてくれています(例えば、「側」ならば鳥の動き)。ぜひ、「永字八法」における筆の動きをイメージできるようにしておきましょう。
次に王羲之。その最高傑作といえば「蘭亭序」。原本は王羲之loveの唐太宗が墓まで持っていったために失われ、今はコピー本が遺るのみ。その中でも「八柱第三本・神龍半印本」と「八柱第一本・張金界奴本」が有名です。ぜひ、高校一年生の教科書掲載の「行書と楷書の基本的な違い」を念頭に置きながら、鑑賞の時間をとってみましょう。
中国書法史では<明末連綿草→八大山人→揚州八怪→碑学派>の流れで、清代中期に帖学派(劉?・翁方綱など)と碑学派(ケ石如、伊秉綬など)が拮抗するところまでを学びました(実技編では揚州八怪の鄭燮の独創的な書、ケ石如の逆入平出法を)。
日本書法史では平安仮名古筆を<高野切→関戸本古今集→元永本古今集→寸松庵色紙→継色紙>とやってきて、今回は三色紙のラストバッター「升色紙」の散らし書きによる立体的な表現に触れました。
※高野切第三種の「は」
【書法道場展「豐遊」〜2024年3月20日〜24日 in烏丸御池しまだいギャラリー】
天候には恵まれませんでしたが、来場者の方には随分と恵まれました。帰り際に「たのしかった!」のメッセージをいただける書道展、生徒の皆さんの素晴らしい作品によって実現できました!
☆道場展を支えてくれたアシスタントのみなさんと―
〇2024年3月の稽古風景
児童に学生、社会人、妊婦さんもバランスボードと書道の愉快な関係を味わってくれました。
【大人の書の学び〜2024年3月】
明清代の書を、【三宋二沈→呉派・華亭派(文徴明、董其昌など)→明末連綿草(王鐸、傅山など)→揚州八怪(金農、鄭燮など)→帖学派(劉?、翁方綱)→碑学派(ケ石如、何紹基など)】の流れで、まずは大雑把に捉えてみましょう。
〇八大山人(朱?)…その稚拙風の書がキッカケとなり、魅せる表現の明末連綿草から、個性的なデザインの揚州八怪の書に転換したと言われます。マジックペンを擦りつけたような線の渋滞感、子供が書いたような「口」部の開き方など、王羲之書法とは一線を画するスタイルです。
〇金農(冬心) …鄭燮と並ぶ揚州八怪の代表格。刃物で岩の表面を削いだような微動を含む線質で、ロゴハウスのように線を組み立て(横画太く・縦画細く)、縦長長方体の隷書を表現。王羲之行草書の二折法は唐代楷書の三折法、北宋三大家の多折法と進化していきますが、金農の「無限微分折法」によって折法の歴史は終焉したとも言われます。
〇礼器碑…二大隷書(八分隷)といえば「礼器碑」と「曹全碑」。礼器碑はベートーヴェンのようなメリハリのある重厚感、曹全碑はシューベルトのような流麗な軽やかさを備えています。
〇継色紙…オーソドックスな散らし書き「寸松庵色紙」、わびさびの渋み「継色紙」、立体感を出すアレンジ「升色紙」といったように、「三色紙」のぞれぞれの特徴を押さえておきましょう。継色紙は筆意が直線的で、連綿を多用せず断続的です
〇辰年生まれの能書家・・・「辰年生まれ」という括りで、書の歴史を全体見渡してみましょう。王献之、?遂良、藤原行成、祝允明、王鐸、呉昌碩が、それぞれ、どんな時代に生きたのか。時代背景と合わせて書風を捉えておきたいところです。
〇2024年2月の稽古風景
武術家・
笹井信吾さんに教わった「口に水を含む」を、書の稽古で実験。生徒さん達の想定外のリアクションに、新たな書の稽古法として、大きな可能性を感じています。
【大人の書の学び〜2024年2月】
1 元代〜明末の書道史
元代・趙孟フの王羲之回帰→明代初期・三宋二沈(宋克、宋スイ、宋広、沈度、沈粲)の元代章草復古→明代中期・呉派(文徴明、祝允明ら)の宋代復古→明代後期・董其昌の天真爛漫→明末清初・張瑞図、倪元ロ、黄道周、王鐸、傅山らによる連綿草長条幅・・・といった流れを、振り返ってみましょう。
2 王鐸と傅山
弐臣として蔑まれた王鐸は、努力型の"うまい書"。生涯「一日臨書・一日創作」と伝統技法を重視、直筆で抉るように書きます。それに対して、忠臣として尊敬された傅山は、天才型の"いい書"。「寧ろ拙なるも巧なることなかれ」と人間性を重視、自由自在に筆を運びます。
3 虞世南「孔子廟堂碑」
「孔子廟堂碑」の書法(虞法)は、欧陽詢「九成宮醴泉銘」の書法(欧法)と比較されます。虞法の「内に剛柔を含む」温和な南朝系に対し、欧法は「外に筋骨をあらわす」峻厳な北朝系。縦長・整然・右方発展体といった共通点を踏まえつつ、<中鋒・円筆・向勢⇔露鋒・方筆・背勢>で比較しておきましょう。
4 元永本古今集(藤原定実)
古今和歌集全20集が、仮名序も含めて完全な形で現代に伝わる最古の古筆。関戸本古今集と比べて字形は背が高くスマート、結び目も小さく、行の流れもシンプル。墨色と料紙と調和も見事。
◎自分で選んだ言葉をを自分で選んだデザインで― 三月開催の書法道場展「豐遊」に向けて、児童生徒の皆さんが作品制作!
◎出せば伸びる!発表の機会こそが最高の書法技術の研磨剤 ―書法道場展「豐遊」に向けて清書を仕上げました
【大人の書の学び〜2024年1月】
(前提) 東晋・王羲之が日常書体(行草体)を、初唐・欧陽詢らが正式書体(楷書体)のひな型をつくり、書体史を一区切りさせます。その後、顔真卿が蚕頭燕尾で革新的な書風を打ち出し、北宋三大家(蘇軾・黄庭堅・米フツ)が書のルネッサンスと言われるほどに書表現を豊かにしていきます。元代は趙孟フが復古主義(伝統的な王羲之書法への回帰)を打ち出すも、明代には文徴明や董其昌らが革新的書風を主流としていきます。そして、明代末期に登場したのが「明末連綿草」という新たなスタイルです。
1 明末連綿草
削ぐような運筆の張瑞図、紙の奥までえぐり掘り進める黄道周、ドライブで擦りあげる倪元ロ、直筆で線をきしませる王鐸、くるくる自由自在な傅山・・・明末連綿草の作品群を「筆づかいの癖」という視点で見比べてみるのもオモシロいでしょう。
2 草書の基本
隷書体の崩しとしての王羲之の草書(古法・二折法)を忠実に再現したのが、孫過庭「書譜」。独草体をベースに、卵をひっくり返したような字形が特徴的。王羲之「十七帖」でも多用される「断筆」によるリズム変化も捉えておきたいところです。
3 高野切第二種
高野切一種や三種に比べてシンプル。一種のように優雅な色をつけず、三種のようにリズムやテンポに乗るわけでもない。変化が少なく、直線的な連綿線を多用。線が深く、渋みのある古筆の名品。
【2023年12月の稽古風景】
〇児童生徒さんも「書いて飾って叶えるカレンダー」制作! 代表作品は滋賀銀行堅田駅前支店に展示します〜2024年1月初旬―下旬
〇書法道場展「豐遊」に向けて錬成会!
☆忘年会も楽しい時間でした!
【大人の書の学び〜2023年12月】
@明末連綿草〜張瑞図
・明末清初の転換期、「読ませる書」から「魅せる書」にアップデートされた長条幅作品群のトップバッターは「張瑞図」です。
・張瑞図は、テニスのバックハンドスライスのようなシュッと筆の側面でえぐり削るような「柳葉風の線」がチャームポイント。
・代表作「感遼事作六首巻」「杜甫飲中八仙歌巻」「王無功答馮子華処士書」は、一度は鑑賞したいところです。
A王羲之「集字聖教序」
・まずは、楷書と比べた場合の行書の一般的特徴を押さえておきましょう(楷書は静的で直線的/行書は動的で曲線的)。
・行書は楷書のくずしではなく、隷書のくずしとして生まれました。「李白尺牘稿」や「姨母帖」など、隷書の風合いが色濃い行書を鑑賞してみましょう。
・現代行書の規範たる「集字聖教序」の特徴は肉筆性(身体性)。右手で書きやすいように、トン・スー(二折法)のリズムで、自然に横画が右に上がります。
B粘葉本和漢朗詠集
・「高野切第三種」と書き手が同一とされます。リズミカルで爽やかな書きぶりを味わってみましょう。
・「関戸本古今集」と比較すると、アレンジが少なく規範的(お手本的)に書かれています。
【2023年11月の稽古風景】
☆いい2024年を引き寄せるワーク、「書いて・飾って・叶えるカレンダー」を開催しました!
☆立ち方、座り方、息の仕方・・・「前提」から取り組む書道の稽古、子供達も楽しんでいます
【大人の書の学び〜2023年11月】
(1)元代の書
なんといっても趙孟フ。趙孟フといえば復古主義。復古主義といえば王羲之書法。趙孟フを介して王羲之書法の土台を固めていきましょう。なお、章草風の康里キキ、渇筆表現の楊維驍ノついても、上級者の方は要確認です。
(2)明代の書・・・四期に分けて整理していくとスムーズです。
@初期 〜元代の書の残り香
「三宋二沈」(宗克・宋広・宋スイ、沈度・沈粲)が登場するも、復古主義的な書や章草風の書といった、元の書の特徴が色濃く残っています。
A中期 〜北宋代復古
沈周や陳献章、呉寛は北宋の蘇軾や黄庭堅に復古したような書きぶりです。文徴明も黄庭堅風の書をのこしています。ただ、祝允明や徐渭は、無法の書とも評されるような革新的な表現をしています
B後期〜呉派・文徴明と華亭派・董其昌の活躍
呉中の四才子(唐寅・文徴明・祝允明・徐禎卿)に代表される"呉派"が衰退すると、董其昌を代表とする"華亭派"が台頭していきます。董其昌の書は伝統的(王羲之・米フツ風)ですが、理想としては「天真爛漫」を掲げ、次ぎの明末連綿草へと受け継がれていきます。
C明末 〜張瑞図・倪元ロ・黄道周・王鐸・傅山らによる明末連綿草(詳細は来月・・・)
(3)隷書基本・・・父・乙瑛碑=母・礼器碑、その長男・孔宙碑、次男・史晨碑、三男・曹全碑と、八分隷の位置付けを「家族」でイメージしてみましょう。できれば、乙瑛碑・重厚、礼器碑・繊細、孔宙碑・波やか、曹全碑・流麗、史晨碑・中間的…と、それぞれの特徴を押さえてみましょう。
(4)三色紙・・・高野切のベーシック、関戸本のアレンジに続いて、散らし書きの元祖・寸松庵色紙を取り上げました。寸松庵は、三色紙の中でも最もベーシックで規範的。線質は継色紙ほど重くはなく、升色紙ほど軽快ではく、ちらし方も継色紙ほど静かではなく、升色紙ほどアレンジを加えていません。
【2023年10月の稽古風景】
☆海外転勤になっても、オンラインで稽古を続けてくれる生徒さんがー
☆肩がこるどころか肩こりもなくなり、カラダも軽やかになる書道を目指します
☆3月開催の書法道場展「豐遊」に向けた作品制作が本格始動!
【大人の書の学び〜2023年9月】
@書道史の全体像の捉え方
まずは、“書体(何を書くか)の歴史”を≪王羲之→欧陽詢≫、“書風(誰が書いたか)の歴史”を≪顔真卿・懐素→北宋三大家≫の流れで押さえておきましょう。その他、リズム法(二折法→三折法→多折法→無限微動)や、時代性(晋・韻→唐・法→宋・意→元明・態→清・学)といった視点でも捉えられるようになると便利です。
A米フツ書法
蜀素帖と?渓詩巻に表れる「米?書法の四大特徴」を、王羲之書法と比較しながら確認しておきましょう(@右上がりの強さ、A左上部の強調、B左傾、C偏と旁の近さ)。
B趙孟フ
“王義之に還る”(復古主義)を貫いた趙孟?。繊細で艶麗、同じく貴族社会に生きた小野道風に近い匂いも。
代表作の楷書「玄妙観重修三門記」と行書「前後赤壁賦」は、王羲之書法を学ぶためにも要チェックです。
C文徴明
”大器晩成”の文徴明。趙孟?による伝統への揺り戻しを一歩抜け出し、王羲之の書風に革新的な黄庭堅の書風をミックスしていきます。特に細楷の緻密な書きぶりには、舌を巻くばかりです。
D関戸本古今集
何といっても、線の種類の豊富さ。高野切第一種が「楷書型の典型的優美な仮名」とするならば、関戸本は「行書型・革新的奔放な仮名」とも言えるでしょう(その後、「寸松庵色紙」で「草書的な仮名」が…)
【2023年9月の稽古風景】
大変に厳しい残暑でしたが、「場に礼」から始まる稽古で、心身を整えていきました。
前提として、よりキモチイイ「礼」にするためのバランストレーニングも。
新しい“書道道具”バランス下駄も大人気。足元の条件を変えるだけで、運筆の在り方が随分と改善されるものです。
個別型・講義型・対話型・問答型・・・多用な授業形式を取り入れることで、互いに良い刺激を与えあっています。
【大人の書の学び〜2023年9月】
古典は書きぶりを比べることでこそ特徴がつかめます。前回の基礎書法講座では、主に以下の視点から比較をしました。ぜひ、比較の視点をもちながら、鑑賞や臨書の時間を積極的にとっていきましょう、
@顔真卿と王羲之の行書
字形のとり方(向勢か背勢か、行間が明るいか暗いか)、字の動か方(安定か躍動か、上疎下密か上密下疎か)。線質(力を外に出すか内にこめるか、露鋒か蔵鋒(中鋒)か)。装飾(個性)的な筆法(蚕頭燕尾性の有無)。
A欧陽詢と顔真卿と柳公権の楷書
字形(字外空間優先・背勢か字中空間優先・向勢か)、線質(硬質的・直勢か弾力的・円勢か)、魅せ方(主画強調か余白強調か)。
B北宋の三大家
アシンメトリーさ・字軸の傾け方(重心左下か右下か、右傾か左傾か)、伝統(王羲之)的か革新(顔真卿)的か(向勢・背勢、円勢・直勢、露鋒・蔵鋒、上疎・下疎の比率がどのようなものか)。
C高野切 第一種・第二種・第三種
線質(流麗か、重厚か、リズミカルか)、字形(右下への張り出し方)。
Dその他
・虞世南と黄庭堅の比較・・・横画の性質(三折法か多折法か、右に伸びるか左に伸びるか)。
・米?と王羲之・・・字軸(重心)の傾け方、空間の疎密のとり方、線の太細の度合い。
【2023年8月の稽古風景】
厳しい暑さでも快適に過ごせるよう、心身を爽やかに整えていきました。
●暑い夏でも快適に過ごせる身体を−。それぞれの身体感覚を磨く稽古で引き出していきます。
●「芸は身を助く」は事実です。一生の宝ものとなる『技』を子供達にも伝えています。
【大人の書の学び〜2023年8月】
1.顔真卿「三稿」(「祭姪文稿」・「祭伯文稿」・「争坐位文稿」)
王羲之書法を「蚕頭燕尾」(三折法の拡張)で革新し、北宋の三大家(蘇軾・黄庭堅・米?)による「書のルネッサンス」の起爆剤となった顔真卿の書。起点となったことが重要です。実技編では「祭姪文稿」のポイント(@懐の広さ・A頭部の小ささ・B
2.柳公権
書が廃れた晩唐期において、唯一輝きを放った柳公権。顔真卿と欧陽詢の書風を融合させ、「柳体」と呼ばれるジャンルを創り出しました。代表作「玄秘塔碑」は、顔真卿より線が痩せているも骨力が強く、顔真卿の正方形構成より縦長で爽涼な書風です。「顔筋柳骨」と評される、鋭く強靭な線質を特に習いたいものです。
3.蘇軾
「黄州寒食詩巻」に代表される蘇軾書法は、李?や顔真卿を起点とする革新的なもので、点画を揺らがせ字形を歪ませ、「意の書」と評される感情豊かな表現を実現しています。ポイントとしては@重量感(蔵鋒中鋒)、A右傾(重心左下)、B扁平(字形の潰し)、C多折法(線の抑揚)、D字形の変化が挙げられます。
4.病筆
「八病」に続いて、今回は「八疾」。タブーとされる筆使いの代表例です。記憶しておけば、大変便利です。「テイ・サン・コ・ボク・キン・バン・フ・フ」の掛け声で覚え、自分の書に「病筆」が含まれないか、チェックする習慣をつけていきましょう(@釘頭、A撒箒、B狐尾、C墨猪、D筋書、E板書、F布棋、G布算)。
≪2023年7月≫
〇琵琶湖の浜で砂書道! 筆先に全身の力を通す、効果的な稽古ですー
●道場の子ツバメたちと一緒に、人生を羽ばたいていくための稽古をしました。
●みんなで心を込めて「礼」。隅々まで磨かれた道場に。ただ、それだけで、健やかになっていきます。
●呼吸を深め、姿勢を整え、書で言葉を磨いていくと、表情も豊かになっていくものです。
【大人の書の学び〜2023年7月】
北魏と随の楷書を墓誌銘(「崔敬よう墓誌銘」「美人董氏墓誌銘」など)に学び、いわゆる新法行草書を唐代の李よう「李思訓碑」と懐素「草書千字文」に学んでいきました。
書法道場では、楷書は欧陽詢「九成宮醴泉銘」、行草書は王義之(「集字聖教序」、「十七条」など)をベースにしています。ただ、北魏楷書や新法(三折法)行書、狂草といったところへの「行ったり来たり」がスムーズにできるようになれば、楷書や行草書の基本筆法に深みができるようになります。
初心者のうちから、積極的に古典に触れ、自分の書が「古典の香りを纏う」優雅さを味わっていきましょう。
〇北魏楷書
まずは、≪造像記・碑碣・摩崖碑・墓誌銘≫と、書かれた(刻された)対象によって古典を整理分類しておきましょう。例えば、造像記であれば「牛ケツ造像記」「始平公造像記」など、碑碣であれば「張猛龍碑」「貞碑」など、摩崖碑であれば「石門銘」や「鄭羲下碑」など、墓誌銘であれば「元髟謗叙チ」「阮元峻墓誌銘」など。
今回は、北魏楷書のうち「元テイ妻穆玉容」、「司馬モ」、「司馬顕姿墓誌」、「張黒女(張玄)」の各墓誌銘について、新たに取り上げました。
〇隋代楷書
「美人董氏墓誌銘」、「蘇慈墓誌銘」、「大僕卿元公墓誌銘」、「元公夫人姫氏墓誌銘墓誌銘」を、滑らかな鐘ヨウ系と法則的な欧陽詢系に分類しながら、完成された初唐代楷書とは異なる書風を書き込んでいきました。
〇唐代行書
いわゆる新法・三折法行書として、李ヨウ「雲麾将軍李思訓碑」の臨書に取り組みました。古法二折法、王義之の書風とはどこが異なるか。横画の右上がりの強さ、始筆や転折の鋭さ、偏旁冠脚の大小のつけ方・・・「書のルネッサンス」と評される北宋の書の起点として、捉えていきました。
〇唐代草書
懐素といえば、いわゆる狂草、「自叙帖」によるドラマチックな表現が有名ですが、渋く古樸な「草書千字文」(千金帖)に触れました。両帖を比べてみれば正に「動と静」と言える対照的な表現ですが、やはり、同一人物が書くからこその「筆癖」は共通しています。
懐素には、夏雲がたなびく様子を眺めて、革新的な筆法を編み出したという故事(「夏雲奇峰」)がありますが、自叙帖と千金帖の書きぶりを丁寧にだどっていけば、その極意が垣間見えてくるのかもしれません。
≪2023年6月≫
●みなさん、本当にステキな表情!
【大人の書の学び〜2023年6月】
●貞碑(523)
張猛龍碑(522)と書風を比べてみましょう。どちらも、後期方筆系の北魏楷書ですが、張猛龍碑は荒々しく、貞碑は落ち着いた雰囲気があります。まずは、横画の右上がりの角度や主画の強調の仕方に着目してみるといいでしょう。
●北魏墓誌銘
様々な墓誌銘のなかでも、北魏代の六優品をピックアップしました。牛ケツ造像記や張猛龍碑などと比べて、全体的には行意含有率が高く、南朝(王羲之)の風合いが色濃いような印象です。
→@元髟謗叙チ=牛ケツ造像記に近しい方筆系。A元顕儁墓誌銘=貞碑の行意を高めたような円筆系。B司馬モ妻孟訓墓誌銘・・・スタイリッシュな方筆系。C皇甫墓誌銘…隷意のある円筆系。D崔敬?墓誌銘・・・鄭羲下碑に近しい円筆系。E李壁墓誌銘・・・張猛龍碑に近しい方筆系。
●智永「真草千字文」
智永は、「鉄門限」という故事で知られる、隋代きっての能書家。代表作「真草千字文」は、奇跡的に真筆「小川本」が現存。また、良質な拓本として「関中本」や「寶墨軒本」もあり、王羲之「十七帖」や孫過庭「書譜」と並んで、草書の基本を学ぶのにもってこいのテキストです。
≪2023年5月≫
●夏の書遊び全国大会
課題は「空」。スポンジや歯ブラシ、西陣織、鹿の骨など、筆以外の道具をつかって、デザイン書道を楽しみました。
●大人の生徒さんは、古典のアレンジにチャレンジ
王義之、鄭道昭、顔真卿など、古典に基づいた作品づくりをしました。
●児童生徒さん、バランストレーニングを楽しみながら、書き方を向上させていきました。
【大人の書の学び〜2023年5月】
●張猛龍碑(522年)
建碑から長らく、あまり注目されなかった張猛龍碑。ところが、1800年頃、清代の碑学派(包世臣)によって「書道史上の最高峰」とされ、張猛龍碑が脚光を浴びることになりました。北魏楷書の創始者・趙之謙は逆入平出で、張裕サは外方内円により張猛龍碑を表現。張猛龍碑の特徴は「方筆」。鋭く、右上がりが強い、手足(払い)が長く、引き締まった字形。スタイリッシュな躍動感があります。
●王羲之「蘭亭序」(353年)
貴族的な書きぶりですが、王羲之は「骨こう」と呼ばれるほどマッチョ系。楷書では「楽毅論」、草書では「十七帖」、行書では「集字聖教序」「喪乱帖」「孔侍中帖」など、その名作のコピー(搨模本や拓本)は沢山残されていますが、やはり、「蘭亭序」が最高傑作。そのコピーの中では八柱第一本(虞世南臨模・張金界奴本)、八柱第三本(馮承素搨模・神龍半印本)、定武本(欧陽詢臨模)が有名です。
●孫過庭「書譜」(687年)
孫過庭は、新法・三折法という流行に流されず、伝統的な書法(古法・二折法)にこだわった、かたくなな保守系書家。頭大脚小、中心右下移動、左傾といった字のフォルム(結体)のとり方も、伝統的な王羲之書法にかない、「書譜」は「十七帖」と並ぶ草書の双璧と評されています。
≪2023年4月≫
●足元がグラグラな方が、強い線が書ける!? バランスボードと書道を組み合わせると、新たな発見があるものです。
●児童生徒さん、心技体をバランスよく磨いてくれています。
【大人の書の学び〜2023年4月】
●鄭道昭「鄭羲下碑」
・方筆系の龍門四品(始平公・孫秋生・魏霊蔵・楊大眼)と異なり、鄭羲下碑は「円筆系」です。
・鄭道昭は王羲之・顔真卿と並ぶ「第三の書聖」とも評され、その雄渾な書風は、特に、清代碑学派の能書家(趙之謙など)を魅了していきました。
・代表作の「鄭羲下碑」は「篆の勢、隷の韻、草の情が全て具わる」と言われる多様な書きぶりで、「野外芸術の精華」と書の世界では最高ランクに位置付けられています。
●欧陽詢「皇甫誕碑」
欧陽詢の楷書四碑(化度寺碑、九成宮醴泉銘、温彦博碑、皇甫誕碑)の中でも、皇甫誕碑は、欧法(背勢や方勢など)が際立っています。楷書の極則「九成宮醴泉銘を修得するには、まず皇甫誕碑から」とも言われます。
●顔真卿「顔氏家廟碑」
・王羲之の流れをくむ初唐三大家ら伝統派に対して、顔真卿は懐素と共に革新派とされます。
・初唐三大家により楷書体が完成した後、盛唐の顔真卿が蚕頭燕尾による感情豊かな書を打ち出したことで、新たな書風の歴史が花開き、「意の書」と言われる北宋の三大家に繋がっていきます。
・顔真卿の楷書作品は数多くありますが、「多宝塔碑」、「東方朔画賛」、「麻姑仙壇記」、「顔勤礼碑」、「顔氏家廟碑」の五つを覚えておけば、まずは、十分でしょう。
≪2023年3月≫
立ち方から始める「本来の書の稽古」。健やかな立ち方が、美しい書き方の前提です。
〇

〇児童生徒のみなさんも、イキイキと稽古をしています。
【大人の書の学び〜2023年3月】
@王羲之尺牘
まずは、「喪乱帖」と「孔侍中帖」に触れてみましょう。慣れてきたら、菅原道真を左遷した醍醐天皇にゆかりの「妹至帖」や、風流天子・宋の徽宗や清の乾隆帝や明の董其昌に関係する「行穣帖」、広島原爆で粉塵と化してしまった「遊目帖」も鑑賞してみましょう。線の弱い人は「奉橘帖」、テクニックを磨きたい人は「初月帖」といったように、TPOに応じて使い分けてもいいでしょう。
A北魏楷書
北魏後期の漢化政策による南朝書風の流入により、ブラッシュアップされた北魏楷書を【碑・墓誌・造像記・摩崖】の4つに分類し、捉えていきました。
<碑> 北魏楷書の最高傑作「張猛龍碑」と「貞碑」は、必ず鑑賞されたし。
<墓誌> まずは「元顕儁(げんけんしゅん)墓誌銘」、「張黒女(張玄)墓誌」に触れてみよう。
<造像記> 「牛ケツ造像記」+「龍門四品」(始平公、魏霊蔵、楊大眼、孫秋生の各造像記)の「方筆性」と「躍動性」を捉えよう。
<摩崖> 書道史の中で燦然と輝く、円筆系の摩崖碑・鄭道昭「鄭羲下碑」は要チェック。
Bチョ遂良
楷書四碑のうち壮年期の「伊闕仏龕碑」と「孟法師碑」は欧陽詢の書風に近く、晩年期の「房玄齢碑」と「雁塔聖教序」では、より独自性を発揮しています。いかにして「チョ法」を編み出したか、孟法師碑と雁塔聖教序の比較から始めてみましょう。また、?遂良の行書「枯樹賦」については、「蘭亭序」と比較しつつ、針金のような線、字形の変化の多様性などを学びたいものです。
●全身を整えながら、書に取り組みます。
●みなさん、いい表情されています(´▽`)
◎書は「最高の健康法」です。全身を緩めて呼吸を深め、内なる芸術性を引き出していきます。
◎まずは、「書を知る」ことから―座学の時間も大切にしています。
たのしく全身を整えながら、書の稽古に励みます。
●オンライン生のみなさんも、コツコツと稽古に励んでいます―